昭和58年03月07日 衆議院 予算委員会第六分科会

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公明党 草川昭三
公明党・国民会議の草川昭三でございます。

きょうは私の方から、新聞販売店を取り巻くもろもろの問題についてぜひ大臣に聞いていただきたいわけでありますし、特にきょうは通産省所管の「ABCレポート」というのがありますので、それを取り巻く問題に触れていきたいというように思います。

私は、昨年の本委員会におきましても、新聞業における取引の実態は非常に問題が多い、特に販売店に従事する方々の労働条件、あるいはまた奨学金でたくさんの販売店の配達員を募集したりしておるわけでございますけれども、その奨学金も奨学金ではなくて単なる前借制度にすぎないのではないかというようなことも申し上げてきたわけでございますが、しかし、何せ4700万、5000万近い日刊新聞というのが実際私どもの日常生活の中に溶け込んでおるわけでございます。しかも日本の新聞というのは世界でもすぐれた情報機関だと私思っておりますけれども、一たん新聞社から発送されたその後の流通過程というものは、恐ろしくこれは前近代的というのでしょうか、後ほど質問いたしますけれども、公正取引委員会もさじを投げたというような状況というのがあるわけであります。

しかも、91%が戸別に配達をされておるわけでありますが、押し紙、拡材、無代紙の提供あるいはまた悪名高き拡販団と称する別働隊の強引な勧誘というのは依然として後を絶っておりません。

新聞というのはだれが何と言ったって新聞の紙面の優劣あるいは個性によって読者に購入をしてもらうという大原則があるのでありますけれども、紙面の優劣には全く関係がないわけであります。

それで公取も56年の2月に改善案を提示をして、1年3カ月の余裕を持って昨年の6月、業界みずからが正常化を約束をし、ことしの1月どの家庭にも配布をされております「新聞の正常販売にご理解を」というこういうチラシで、無料配布はしません、スポーツ紙の土曜、日曜のサービスはしません、定価の割引販売もしません、景品類の提供もしませんと配っておみえになるわけです。

ところが、たまたまことしの2月の、もう名前を挙げたらびっくりするような優秀な新聞社ですけれども、それの請求書の中には、れっきとして拡張料の請求があったり、あるいは拡張奨励金、いわゆる景品代です、景品代の本社負担分を5万円なら5万円を持ちますよという請求書を私は持っておるのです。

1月に出しておいて2月に相変わらず舌の根も乾かないうちにやるわけです。これがもうわれわれが日ごろ尊敬するいまの日本の新聞の一流の社説なり報道記事に裏打ちをされる現場の実態かと思うと、余りにも乖離がひど過ぎると思うのです。ひとつそういうことを主題にきょうは議論を進めさせていただきたいわけでございます。

問題点を販売店にしぼります。販売店というのは非常に御苦労な立場にあるわけでありますが、最近販売店の倒産あるいは夜逃げ、私の後援会にも実は夜逃げしたいのがいるのです。非常に苦しんでおるということでお店をやめた方もおりますが、なかなか倒産、夜逃げの数というのはつかみがたい点があると思います。たとえば本社が肩がわりをしてしまうということで数字にカウントされない例がございますが、ひとつ東京都内だけでもいいので、最近の販売店の現状について報告をしていただきたい、こう思います。

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政府委員(通商産業省大臣官房審議官) 斎藤成雄
新聞販売店の数でございますが、55年の商業統計で54年の6月1日現在で全国に1万8600ございます。これが御指摘のように廃業とか新規開業とかあるいは吸収合併とかいろいろ変化が激しいものですから、これについて十分ウォッチできる状況にございませんで、全国団体でございます日本新聞販売協会でも全国の状況については掌握できてないという状況でございます。

たまたま御指摘のように東京都の分につきましてはこの新聞販売協会で調べた数字がございまして、昭和50年に新聞販売店が東京都23区内でございますけれども1367ございましたのが55年には1349になっておる。単純な計算をいたしますと18店減ったということでございますが、この間における廃業というのが表に出ないかっこうでございまして、その数が429というふうに報告を受けております。

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公明党 草川昭三
5年間に429店舗が廃業になったというわけであります。それで、これもパーセントで言いますと約3割、31%が廃業になっております。

これは名前を挙げた方がいいのかどうかわかりませんけれども、たとえば朝日新聞のような新聞社でも廃業が51店舗で14%であります。毎日新聞の場合でも151店舗で51%、読売新聞が74店舗で20%、日本経済新聞が30店の廃業で28%、サンケイが98店舗で56%、東京が25店で31%。

こういうようにわずか5年の間に廃業があるわけですから、これは本来は中小企業対策としても重大な関心を持たなければいけないわけです。それは、日本の中にはもろもろの産業がございますが、営業をしてわずか5年の間に3割近くがやめなければいけないというのは、どこかに欠点があるわけです。景気、不景気という問題ではないわけですから。

しかも、私がいま名前を挙げたのは全国紙で一流紙です。どの新聞を取り上げても非常にりっぱな新聞であります。だから、まずいわゆる商品という意味で言うならば、文句のつけようがないものを扱っておる。

しかし、なぜ3割の店が5年間でつぶれなければいけないのか。これを少し解明していかなければいかぬと思うのです。

そして、これをいろいろと追求してまいりますと、昨年も取り上げたわけですけれども、販売部数ということにどうしてもノルマがかかるわけですから、耐え切れなくてやめるということになるのでしょう。

ABCレポートというのがあります。これは新聞社がいわゆる広告収入を上げる場合の1つのめどになるわけでございます。ちなみに、最近の数字は変わっておるかわかりませんが、新聞社の収入というのは広告収入が46%、販売収入が43%だ、こういうわけで、大変大きいわけですから、どうしても広告に依拠しなければなりませんが、それは販売部数に当然のことながら比例をするわけです。ですから、このレポートというのはどうしても水増しになるわけです。実質売れる以上の部数になる。その差額が販売店にいわゆる押し紙というのですか押しつけになる、これに耐え切れない、こういうことになるわけですね。

押し紙の実態でございますけれども、日販協では依然8.3%は押し紙の実態じゃないか、こう言われております。ちなみに4700万部に掛けると、全国で約400万。これは相当なものになります。一部2600円ですから、2600円で計算したら、これだけの金額でも膨大なものになるわけであります。

もう1つ数字をどこで見るかというと、実は新聞の販売管理センターというのが――公取の方からもいろいろな話がありまして、親会社、いわゆる本社にもう今月はマイナス500になりましたと言って押し紙を返そうと思っても、なかなか返せませんから、いわゆる販売管理センターというのをつくって、そこを通じて発行本社に来月はこれだけの数にしてくださいよ、こういうことを言う、そういう意味で販売管理センターというのができたわけでございます。

販売管理センターで発表する数字とそれからABCレポートが発表する数字とは、おのずから食い違うわけですね。これは一体どちらを信用したらいいのでしょうね。どうです、これは。

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政府委員(通商産業省大臣官房審議官) 斎藤成雄
御指摘のとおり、販売管理センターで数字が掌握しやすいわけでございます。実際に販売店の方で数字をとるわけでございますから、数字としては販売管理センターでまとめた数字が実態に近い。新聞社が販売店に送付した、要するに販売店に対する原価請求の部数というのは、御指摘のように実数を上回るというふうに受けとっております。

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公明党 草川昭三
それで、いま押し紙の実態が余りにも多過ぎるので、それで販売管理センターというのをつくって正直な数字を出そうということになったわけでしょう。ところが、販売管理センター自身が数字を発表できないシステムになっているのですね。いわゆる3社立ち会いのもとでなければというのですが、その3社というのは朝日、毎日、読売の販売局長が立ち会わないと、自分たちで自主的に管理した数字が発表できないわけですよ。

だから、これもわれわれにはわからない。これは僕たちにはわからなくてもいいのですけれども、たとえば広告主に対する欺瞞になるわけですよ。広告主にしてみれば一体どの数なんだろう、こういうわけです。

これは非常に問題があるのですけれども、昨年の12月から始まりましてことしの1月、2月というところで、東京の管理センターで私どももいろいろと探してみたら、恐ろしいですね。たった2カ月で本当の正直な数字が出てきたのですね。たとえば読売は12月から1月の間で東京都内だけでマイナス1万6000部というのが出てきたのです。あるいは朝日は1月から2月でマイナス7200部というのが出てきたわけです。毎日は同じ月で約2万部というのが出てきたわけです。サンケイはマイナス1万2000部というのが出てきたのです。東京もマイナス1万5000部。合わせただけでも、本当にちょっと調べただけでも東京都内で10万出るのです。この10万というのは、販売店がお金をもらえないのだけれども本社に納めておるわけです。これはどういうことですかね。それこそ通産省の問題だと思いますけれども、販売店の負担で親会社はのほほんとしておるわけです。

たとえば10万部だけでも、2600円掛ける10万部で2億6000万です。東京都内の零細な新聞店がいままで2億6000万を抱え込んじゃっているわけです。いま申し上げたように全国で約8.3%で400万部としたって、約100億でしょう。100億を超すわけです。104億になるわけです。それがみごと新聞社の収入で入っちゃうのです、読んでない金が。これは近代国家として、文化国家として私は許されないことだと思うのです。大臣、途中ですが、ぜひ一遍答弁してください。

これは幾ら言ってもあすの新聞には絶対載らぬことになっていますから、思う存分言ってくださいよ。

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通商産業大臣 山中貞則
なるほどね。そこのところにまた問題があるのじゃないでしょうかね。たとえば、いまのは別なチラシでしたが、普通の日刊紙に「購読者の皆様へ」という、これぐらいの大きさの「資材、人件費等の値上がりにより来月から値上げいたします」、それに対する抗議の投書も、新聞資本も入っていますからテレビでも、値上げには大体消費者の反対がつきまとうのですけれども、何にも表示する場所がない。そういうようなところから、いま幾ら言ったってあしたの新聞には出ないからとおっしゃったのでしょうが、そこらのところは、新聞の持つ公器性というものもあるわけで、事業税等は非課税にまでしてあるわけですから、一定のモラル、紙面創作の方のモラル、それから販売する収益の方のモラル、両方なければならぬと思います。

しかし、かく申す私も記者をしていたことがありますので、そこのところは結局広告収入といま言われた――そのからくりは後の方は実は私は知りませんでした。発行部数幾らだから横何センチ幅で広告料幾らというふうにずいぶん違います。だからそこらのところで、社の営業の方針としては計算のもとになる発行部数をなるべく多く確保したいし、あるいは見せかけるというのはおかしいでしょうが、いま言われたような押し紙ですか、そういうことが言われているとするならば、見せかけの発行部数による実際の広告の収入ということになるわけでしょうから、これは被害者は広告主、広告を出す人ということになるわけでしょうか。そこらのところで私としては、この仕組みの中に問題がありますならば、その仕組みはぜひ、公共の立場にある、ペンは武器よりも強しということで紙面をつくっておいて、裏ではあこぎな商法と言われないようにしてもらいたいものである、そういうふうに思います。

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公明党 草川昭三
いま犠牲は広告主というお話もありましたが、日本の省エネルギーからいっても販売店から――御存じのとおり包み紙になっていますわな。ひもでくくってあるものを、専門の残紙屋という商売があるわけですけれども、梱包のまま販売店からパルプ会社というのですか、製紙会社にそのまま戻るわけですよ。

わが国の省資源からいっても残紙屋というようなものが存在をすること、あるいは関西では古販屋というんですね。いわゆる残紙屋のことですよ、回収業者ですね。スクラップというのは、使ってスクラップになるわけです。新聞も、読んで意味がなくなったからくず屋さんに渡すわけですが、読まないそのまま残紙屋なり故紙屋に、古販屋に回るということは、私は、これはいま申し上げたように非常に問題があると思っております。