平成29年04月14日 衆議院 経済産業委員会

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日本共産党 清水忠史
次に、押し紙問題について質問いたします。

新聞残紙、いわゆる押し紙問題。私は、3月30日の消費者問題特別委員会で、新聞本社が優越的地位を利用して販売店に対して読者数を大幅に上回る新聞を供給していることが全国紙、地方紙で実際に行われていることを告発いたしました。

押し紙というのは、新聞販売店の経営を圧迫するだけではなく、連日、大量の、何100万部という古紙、古新聞を生み出し、環境にも大変悪い影響を与えています。私の質問に対して公正取引委員会も、押し紙というのは不公正な取引方法であり、このような行為が行われている場合は厳正に対処すると明確に答弁をいただきました。

大臣、当たり前のように私たちの家庭や職場に新聞が届くわけじゃないですか。この新聞宅配制度というのは本当に世界に誇る制度だと私は思っているんです。この新聞宅配制度が守られている背景は、新聞本社の努力、編集者の皆さんの努力、そして記者の皆さんの頑張り、そして配送業者や印刷業者の方々の御努力、それに加えて、何よりも、毎日私たちのもとに届けていただく販売店や配達員の皆さんの汗と涙の苦労があるんですよ。私は、1年間ほど毎日新聞で住み込みで働いてきた経験がありますので、そのことはよく身にしみて知っております。

そういう点では、押し紙というのはやはりなくしていくべきだというふうに思うんです。下請対策にも熱心な世耕経済産業担当大臣、この問題についての認識をお聞かせいただけますか。

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経済産業大臣・内閣府特命担当大臣(原子力損害賠償・廃炉等支援機構) 世耕弘成
新聞社が優越的地位を濫用して、新聞販売店に対して注文した部数を超えて新聞を供給して新聞販売店に不利益を与える行為については、これは、独占禁止法において不公正な取引方法として禁止されているというふうに理解をしております。

現時点において、新聞販売店の業界団体から本件に関する相談や要望は聞いておりません。もし法に違反するような事実が発生している場合には、公正取引委員会において適切に対応されるものと理解をしております。

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日本共産党 清水忠史
私は、さきの委員会で、読売、朝日、毎日、日経、各紙の押し紙の例を具体的に紹介したんですが、実は、この質問に対して共感していただいた産経新聞の販売店主から手紙と資料が寄せられました。

大量の押し紙により毎月20万円の赤字が続いていた、そして、折り込み広告も減りまして、月の赤字が50万円を超えるようになった。もうこれ以上はもたないということで、一念発起して本社販売局員の方にお願いをして減紙の申請をしたということなんです。そうすると、毎月の古紙回収代が何と7分の1に減ったというんですよ。それだけ毎日毎日大量の残紙、押し紙があったということのあらわれだというふうに思うんです。

ただ、この押し紙を切るに当たっては、本社から相当な圧力も受けたということなんです。しかし、この販売店主は、私たちは何も悪いことをしていない、真面目に正直に働いているだけですと、信念を持ち、歯を食いしばって、現在、経営を立て直すために努力を日夜続けておられます。

販売店はみずから声を上げにくいという実態があるんです。販売店などから経済産業省に対して、新聞残紙の実態がどうなっているかということをぜひ調査してほしいというのが、これは実は販売店の皆さんの要望でもあるんです。

実は私、調べましたら、過去に、公正取引委員会が販売店に対するアンケート調査、もう30年ほど前ですけれども、やったことがあるので、実績があるんですよ。

ぜひ、販売店から相談、要望があれば、経産省としても、公正取引委員会と連携して、この実態調査というものにしっかり取り組んでいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

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政府参考人(経済産業省大臣官房審議官) 竹内芳明
お答えいたします。

経済産業省として、新聞残紙問題に関しまして、業界団体から具体的な相談が寄せられます場合には、私どもとして、その必要性について業界ともよく相談をしてまいりたいというふうに考えております。

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日本共産党 清水忠史
業界団体は非常に、業界団体と言う場合は新聞本社のこともありますので、販売店のことだと思うんですけれども、販売店主の皆さんは、この残紙問題を例えばマスコミにリークしたり弁護士やあるいは政治家に相談を持ちかけようものなら、それを突きとめられるようなことになり、激しい圧力がかけられるんです。

例えば、強制改廃というのがあります。強制改廃というのは、そこの販売店の台帳を全部提出させる。しかし、この読者台帳の提出を拒むと、全ての読者を調査して、そして別の販売店をつくって、そこの販売店に全ての読者をつけかえて廃業に追い込む。こういうことも実際行われているんです。現に販売店と本社との間で訴訟も継続しているんです。

業界団体からそういう相談があれば適正に相談に応じるということでは、待ちの姿勢では私はだめだと思うんです。これは、例えば、一般的な中小企業の場合、下請企業の場合、元請から不当な取引を持ちかけられているときに、その下請業者が相談をすれば、特定されて、さらに不利益をこうむることがあるわけですよ。だからこそ、受け身になって、通報があって調べるというのではなくて、調査をするというのではなくて、明らかに、大臣も答えられたように、この残紙の問題、押し紙問題というのは独禁法違反ということなんですから、そうした実態が行われているのかどうか、声なき声を調査する上で、その調査が必要ではないかという私の提案なんです。

世耕大臣、どこまで言えるかということはあるんですけれども、やはり新聞宅配制度を維持していかないと私はだめだと思っています。

私は、各紙、主張はいろいろありますけれども、組織ジャーナリズムの重要性というのは実感しております。全て国民にとって必要なメディアだというふうに思っています。しかし、それがやはり正義と秩序のもとに健全に発展していかなければ、虚偽の部数を大量に供給して販売店の経営を苦しめ、そして毎日毎日何100万部と言われるような古紙、新聞残紙をつくる。

それで、もう一つ加えて言いますと、政府広告の折り込みだとか、いわゆるスーパー、ピザ屋さん、不動産屋さんの折り込みについても、これは読者数に応じて持ち込まれているのか、本社からの供給部数に対して持ち込まれているのか。こうした実態調査も私は必要だというふうに思うんですよ。これはやはり、消費者だとか企業が不利益をこうむっている、あるいは、政府広告の部数に虚偽があるということになれば、国民の税金が不当に使用されているということになるからであります。

ぜひ、きょう私のお話を聞いていただいて、世耕大臣自身、新しい認識をお持ちになられたというふうに思うんですが、何か所見がございましたら一言述べていただくことは可能でしょうか。

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経済産業大臣・内閣府特命担当大臣(原子力損害賠償・廃炉等支援機構) 世耕弘成
私は下請取引の改善というのに取り組んでいるんですが、残念ながら、新聞販売業というのは下請関係にはならないんですね。あくまでも、新聞社が発行する新聞を、そのまま供給を受けて、それを取引するという立場でありますから、下請法の範囲には入らないということであります。基本的には、やはり独禁法で、問題があれば公取が厳正に対処してほしいというふうに思います。

経済産業省としては、経済産業省所管の法人として日本新聞販売協会というのがありますから、本当に今御指摘のような問題が広範に存在をして、販売業界として深刻な問題であれば、この団体から我が省に申告があると思いますから、それを受けて、必要であれば対応したいというふうに思います。

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日本共産党 清水忠史
これはコンビニと同様に、元請、下請の関係にはないんですが、やはり優越的な地位を持った、いわゆるフランチャイズ側、新聞でいえば本社側が不当な取引を現にもたらしているという実態はぜひ認識していただきたいというふうに思っています。

私が提案したいのは、やはり、新聞本社と販売店が、今大臣が言われたように、真に対等な立場で、そして、大量の残紙がなくても、読者数、実際の読者に配達、集金を行う中で十分経営が成り立っていくという販売店本来の役割を取り戻していくということが大事だというふうにも思っております。

ぜひ引き続き、公正取引委員会とも協力をして、この問題、是正のために努力をしていただきたい、このことを申し上げまして、私の質問を終わります。

ありがとうございました。